「いいよ」

端的にクレアさんは言った。
でもそれは、俺が望む言葉じゃなかった。

「…意味、分かってんのかよ」

酷く魅惑的な少女を前に乱雑になる口調を止められない。

だって俺は、このひとに、襲うぞって言ったんだ。


『あんま、近づくなよ。俺だって男なんだ』
『だからなあに?』
『……襲いたくなる』


断っておくけど、本当にそんなことするつもり、ない。
あまりに無防備で言い方を変えればまるで俺を男としてみていない、クレアさんに、少しでも俺の性を意識して欲しかっただけだ。

それだけなのに。
いともあっさりとその行動に対する許可を振り下ろされてしまう。


発言を肯定されることで、こんなに傷を負うなんて知らなかった。


「意味って、つまりグレイくんがわたしに異性としての魅力を感じてて、欲望を我慢できそうにないのにわたしが無防備に、」
「いい。分かってるならいい、言うな」

女性の口から聞く具体性は酷く生々しい。
萎えそうだ。

「じゃあ」
「うん」
「分かってて、いいって言ったってことは」
「うん」
「押し倒して…触っても、いいのかよ」
「うん」

予測にない展開にどぎまぎした。
清廉な青い瞳を前に、このまま欲望に走ってしまおうかと思った。

「だって」

恐々と頬に触れたら、クレアさんが言う。

「わたしがやめてって言ったら、グレイくんはやめるでしょう」
「……っ」


この人はどこまで無体なんだ。


多分俺は、クレアさんを一生抱けない。


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