こころの表面がひどい肌荒れをおこした。 その痛みは心地よくて、あの人を忘れないのには最適で、だから。 わたしはずっと手当てをしないであるいていたのに。 彼は癒そうとする。 癒そうとするくせに、引きずりだそうとする。 触らないでほしかった。 見せ付けないでほしかった。 ―――だって、そうしたら、気付いてしまうでしょ? 荒くれた心の表面に、それでも、時間というふざけた名医が施してしまったケアのせいで、うすいかさぶたがはりついていることに。 引き剥がそうとした。 引き剥がして切り刻んで、またこころの、今度は誰にも触れないような深い、深いところにしまいこんでおこうと、思った。 それなのに彼が言うから。 「強引に癒そうなんてしない。でも、アカリが自分で自分を傷つけるなら」 真摯にわたしを貫いて、彼が言うから。 「強引に押さえつけてでも、止めてやるから」 薄くめくれた皮の表面を剥ごうとする、わたしの指先は動けなくなる。 こころの表面がひどい肌荒れをおこした。 その痛みは心地よくて、あの人を忘れないのには最適で、だから。 わたしはずっと手当てをしないであるいていたのに。 抱き込められる心地よさを、きっともう、わたしは忘れないだろう。 BACK |