気の合う友達。
きみが言うならそれで。

俺は無邪気に惹かれ騒ぐ俺の心を憎めばいいんだろう。


::: ライン :::


修行帰り振り返り、きみの育む大地を瞳に映す。
茂った緑。
たくさんの動物の気配。
そこには確かにいのちが息づいている。
何より明かりの点った小屋の窓から、こぼれる光がきみの存在をあらわにする。

一目見たい。
会いたい。

けれど俺は夜更けにきみに出来る話題なんて持ちあわせていない。
昨日までも、今日も、これからもきっと思いつけないでいるだろう。

気の合う友達。

俺との関係を訊ねられたきみはためらいなく口にした。
いつでも優しいきみに会いたい。
だからきみが言うならそれで。
きみの望み通りでいたかった。

好きになりたくなかった。

きみと築いた思い出が俺を、無駄に切なくさせるだけの記憶なら。
吐息のたびにひとつ、ひとつと消してしまいたい。

柄にもなく泣きたくなった。
だからきみを思い出すことにした。
だってきみを想うと俺はよけいに泣きたくなるから。


誰もがきみのまぶしい笑顔を見つめて微笑みあえるのに。
俺だけは俯いて、手入れされたきみの、履きなれているんだろう靴を見つめる。

俺は真正面から見つめられないきみの笑顔を鮮明には思い描けなくて。
きみは俺の靴が泥だらけだって傷だらけだって、そんなことは気付いてもいないだろう。

それでもそばにいられるなら。
この微妙な距離だって愛おしいと思う。
いつでも優しいきみに会えるなら。
これからもきみの望み通りでいようと思う。


俺はただ無邪気に、きみに惹かれ騒ぐ俺の心を憎めばいいんだろう?


気の合う友達。
これが、きみと俺のライン。



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−ポルノグラフィティ「ライン」より−