かいがいしく彼女を世話する俺の姿に、噂は瞬時に広まった。

いわく、その一、俺と彼女は付き合っているらしい。
いわく、その二、俺と彼女はとてもラブラブらしい。
いわく、その三、俺はとりわけ彼女に骨抜きらしい。

全部正しいと言えればよかった。残念ながら現状ではまだ。

「いい加減にして、邪魔」

カマを手にとった彼女に心配でついてまわっていた俺に憮然と彼女は言い放つ。

「大体、付き合う前から毎日仕事で使ってるんだから、心配なんて今更」

さらりとした金髪をかきあげる仕草がアンニュイでまたよろしい。
と言っても実はまだ髪はおろか手にすら触ったことのない俺だった。頭の中では好き勝手に振舞う欲望は、どうしてなかなか理性に太刀打ちできないようだ。

彼女は美しい造作をしている。
彼女は美しい所作をしている。
彼女は美しい口唇をしている。
彼女は美しい毛髪をしている。

彼女の見目は美しい。

彼女の心は少しばかり美しくないみだいだが、目に見えないので判断のしようがない。

今正しい現状。噂その二以外。
できればこれも実現したいという、密かな思惑はあれど。



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20100530:アップ